■岩谷堂箪笥の製造工程
◆木地
 岩谷堂箪笥は、永い年月を経た大切な欅を使用しています。
 まず原木を製材します。
 あばれない(狂わない)ように「木枯らし」をおこないます。(木枯らしとは材料と材料の間に桟をはさみ、風通しを良くしながら何年も自然乾燥させること)
 こうして乾燥させた狂いのこない材料から、無駄なく用途に応じた材料取りをおこないます。これを「木取り」と呼び、熟練された技術が必要とされます。さらに「細工」と呼ばれる組立てをおこないます。
 これらの作業はいまだに一貫した手作り作業でおこない、お客様にいつまでもお使いいただける岩谷堂箪笥を作り上げていきます。
◆漆塗装
 最近の遺跡の発掘でも、たびたび漆を使用した道具が発掘されているように、漆は縄文・弥生の時代から使用されてきました。外観の美しさはもちろん、重厚さ、耐久性においても非常に優れています。昔から岩手県は日本を代表する漆の産地で、平泉文化を華麗に装飾した漆塗装の技術が今も岩谷堂箪笥に生きています。
 漆塗りには、代表的なものに拭き漆塗りと透明の木地蝋塗りがあり、塗っては拭き、塗っては磨くという工程を何度も繰り返します。
 木地蝋塗りは次のようにおこなわれます。

細工された木地に水をつけて砥石で研ぐ。
研いだ木地に漆と砥粉を混ぜ、ヘラで塗り、乾燥させて研ぎ出す(下地)。
次に生漆だけをヘラで塗る。
乾燥させて、また丹念に研ぐ(下地押さえ)。
刷毛で塗っては研ぐを数回繰り返す(中塗り)。
刷毛で上質の木地蝋漆を塗りさらに研ぐ(上塗り)。
最後に摺漆を数回。そのたびに磨きを入れます。
◆手打ち金具
 「手打ち彫り」は、まず、唐草や唐獅子、龍などの下絵を描きます。この意匠(デザイン)は、永い間伝えられてきたものです。
 この下絵を鉄板に貼ります。この鉄板を金槌と自分で作った鏨(たがね)を使い裏から打ち出し、表から線刻して絵模様をいきいきと浮かび上がらせるように打ち出していきます。裏返して膨らみをさらに出し、最後に鑢(やすり)をかけます。
 出来上がったものに錆止め、色上げをし、仕上げます。
◆仕上げ
 塗り上がった木地に引手や角金具、蝶番、錠前金具等をつけ、完成します。
岩谷堂箪笥の主な工程
1. 木取り
2. 切り込み
3. 前仕上げ・側仕上げ
4. 引出組立
5. 木地調整
6. 木部着色
7. 拭漆作業
8. 下絵描き
9. 鏨(たがね)彫り(彫金)
10. 打出し